家族「憧れの鳥」を求めて!(下)
 
豊かな渡り鳥の島
 バンクーバーにはどこに行っても公園や森林があるので耳を澄ませば鳥の鳴き声や羽ばたきを聞くことができる。市が指定している鳥類の観察地域は20カ所ある。中でもラドナー地域のウエッサムアイランドのライフィル渡り鳥観察区は内外でも広く知られている。そこでは人を怖れないカモやオオバンの大群とカナダグースが餌をねだって周りに集まってくる。その日はいつも遠くでしか見られなかった灰色ツルも私たちのそばをはな れなかった。寄ってくる鳥たちに気を取られていたら頭上からもアメリカコガラの呼び声が聞こえた。なにやら自分たちにも関心を示して欲しいとさえずって いるようだ。餌台から一摘み餌を拝借して鷹平くんに渡すと目ざとく見つけた小鳥が頭や肩に止まり、小さな手の平から餌をついばんでいた。
 千文さんが立ち止まって観察していたのは頭のてっぺんが黄色のミユビゲラというキツツキだった。沼地を一周してムラサキフインチやオウゴンヒワ、ヒメハジロ、オウギアイサなどアトリ科の種類の多さに夫妻は驚いていた。
 そこには5日間のうち3回も通ったそうだ。何と言ってもハミングバード(ハチドリ)に出会えたことに感動していた。「世界的にも有名な鳥ですから…虫 のようにホバリングする映像を見たことがあっても、実際に見たのは初めてでした。重さを全く感じさせない俊敏な動き、光の具合ひとつで虹色に輝く光沢の ある羽を目にして夢を見ているような気持ちでした。暑い国の小鳥だと思っていましたのでカナダの冷涼な気候の国で見られるとは思っていませんでした」と 述べていた。


出迎えてくれたラドナーの鳥たち
シロフクロウが来る所
 午後3時過ぎ各種フクロウやトビ・タカが生息するバンダリーベイ空港(64 thから112ndの通り)やデルタ空港までの保護区を回った。トビが上空 を旋回して獲物をねらっているのは見えたがシロフクロウにはその日出会わなかった。
 64 thの防潮堤で犬を連れて歩いていた女性と挨拶を交わし、シロフクロウのことをたずねたら「けさ見ましたよ。きのうもおとといも来ていました よ」「何時ごろご覧になりましたか?」「いつも朝10時ごろ見ます。けさもあの横たわっている木に止まっていました。私が見るのはほとんど朝です」と言 いながら止まる場所を2、3ヵ所と、去っていく方向を教えてくれた。
 「あす早く起きてまた来ましょうね」
 雨は止んで夕闇がせまっていたが家族の表情は明るかった。


リハビリ中のシロフクロウは冬になると真っ白になるという
タフな夫婦
 旅の疲れを感じさせないタフな家族だと思ったら、千文さんは学生時代からバスケット部の選手。浩さんはアイスホッケーにも興味を持って細かな技術を練習 している。ハードなスポーツをこなす夫妻が野鳥に惹かれるようになったのは、浩さんが高校時代の国語教師の授業に触発され、サントリーの愛鳥広告を新聞 で読んで野鳥の会に入った。千文さんは小学生の頃から家で小鳥をたくさん飼っていた。あるとき籠の鳥がとても可哀想になり、その時飼っていた鳥を最後に野 鳥に鞍替えしようと考えた。中学生になった時、両親が日本野鳥の会を見つけて入会させてくれた。以来、会には一人で参加して「大人たちに可愛がってい ただきながら環境ボランティアに携わってきました。気の合う仲間と自然に親しみ、良き伴侶にもめぐり合い、生涯を通じる趣味となりました…」
また来ます
 ところで肝心のシロフクロウを見ることができたか帰国直前ホテルに電話を入れた。バンダリーベイに毎朝行って数時間観察したが、野性のフクロウには、ついに出会うことができなかったと言 う。リハビリセンターでは、羽を傷めてケージに飼われていた2羽のシロフクロウを浩さんは私と一緒に見たが、そのとき千文さんはなぜか車から降りてこな かった。保護されたシロフクロウではなくフイールドで獲物をねらうハンターのような野 性のシロフクロウをいつかまた見に来たい、と言って12月31日成田に向かった。千文さんと家族の「憧れの鳥」探しはまだこれからも続きそうだ。