―シベリアの火災―
昨年5月、北日本をおおったシベリアからの、森林火災の煙はひどかった。当 時、故郷の北海道に戻っていたが、滞在中の一ヶ月間一度も太陽を拝めなかった。そんな状態が東北、北海道でいつまで続いたのか定かでないが、北日本の農作物の収穫量が落ち込んだ。原因は日照不足と低温が影響していた。
環境問題では、カナダは先進国の中でも先を走っていると思っていたが、私の思い違いだった。こと、二酸化炭素に関してはバッド(悪)を越してワースト(最悪)である。昨年BC州内で頻発した森林火災は落雷が多いとはいえ、ロシアの2年間の火災を大幅に上回って、二酸化炭素の排出量は世界の自動車や工場群の排ガスなみに、地球温暖化の促進要因になっている。さらに問題なのは「森林は二酸化炭素を吸収し、私たちに必要な酸素を供給してくれるところ」と教えられてきたものだが、今は「森林(火災)は酸素を吸収して大量に二酸化炭素を吐きだしているところ」に変わってきている。打つ手はないのだろうか。「陸鯨悠遊」などと暢気で悠長な便りばかりではなく、たまにはタイムリーな環境問題にも触れて皆さんと話し合ったり、考えるきっかけを掴みたい。今回は森林火災にスポットを当ててみたい。
―BC州の森林火災ー
私の尻に火がついたのは、昨年夏ロッキーツアーの途中で、カムループスや、ケロウナで森林火災を見た時だった。
カムループスでは50キロほど東の森林が燃えていた。煙が盆地の中心街にも漂っていた。そこは死傷者も出て過去50年間で最悪の火災だった。訪れた時にはまだ500人が避難生活をしていた。広大な地域が燃えているのに140人の消防士と5機のヘリコプターで消火活動をしていた。当時BC州では 860ヵ所燃えていた。 消防士もヘリコプターも足りなかったので分散せざるを得なかったようだ。
ー写真集「ワイルドファイヤ」ー
ケロウナの南、マウンテンパークの森林火災についても触れておこう。
そこは7月14日の落雷による火災だった。北向きの強い風にあおられて、ひと月以上燃え続けた。8月23日までに住民の4分の1に相当する2万7千人が学校や各種施設に避難した。そのあと住宅地に燃え移って260戸が全焼した。
昨年暮れ、BC州の森林火災を撮った写真集「ワイルドファイヤー」を見ると、表紙はオカビュー・ロード沿いの高級住宅が燃えている写真を使っていた。森林火災は一度発生すると多くの消防士たちの不眠不休の活動だけでは手に負えない。州内が最も激しく燃えた8月下旬は 850ヵ所、4千7百人の消防士に加えて600人の軍隊も出動した。写真集は生き物のように語る。煙にまかれ、体調をくずした消防士や兵士が後を絶たなかった。マイホームを2、3年で失った家族が焼け跡で寄り添って呆然としていた。死者も出た。消火活動中のヘリが墜落、パイロットも3人が帰らぬ人となった。
ー今後の対応ー
昨年のBC州の森林火災は2千4百51ヵ所が燃え、2万6千6百45平方キロ(東京都のおよそ13倍の面積)が焼けてしまった。それは過去10年間のカナダ全土の焼失面積に匹敵するものだった。これは最悪と云われた2002年のシベリア森林火災の2・6倍に当たる。ロシアの火災の80%は人為ミスで河川の近くで発生している。BC州は30%が人為ミス、70%が落雷によるものだった。火災が発生する地域では、延焼を食い止めるはずの雨が異常に少なく、乾燥状態が長びいていた。どうすれば食い止められるのか今は手探り状態である。異常気象のメカニズムも温暖化とリンクしている。
ーさてどうする…ー
1998年からロシアと日本の科学者(北大、低温科学研究所・東北大、東北アジア研究所)の間でデータの交換が続けられ共同研究の体制ができている。「焼け跡の修復に種まき」という類のいくつかの提言もされているが、それさえできない現状の中で育樹作業は一筋縄ではいかないだろう。
レベルストークで焼けた針葉樹林を見た。そこは、「蜘蛛の糸」の作者がイメージする地獄の針の山のようだった。復旧には手間(人)と時間と金がいる。二酸化炭素は増えるし、温暖化は加速する。さて、どうする?
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オカナガン湖から見た、マウンテンパークの火災(昨年8月27日撮影) |
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昨年の森林火災の写真集『ワイルドファイア』 |
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